“Spread Your Wings”のベースラインに関する考察

先日、DVD“GVH1”の“CREATING THE RAHPSODY”を観ていたら、ブライアンの、
「このテープが博物館行きにならずに済んで良かった」という内容の発言を見て、
ふと思った推理ですが、あくまでも推測ですので、仮説として読んで下さい。


ブライアンが、2003年初頭に、「オリジナルテープを失ってしまった」という
発言が有った事を皆さん御記憶に新しい所と思いますが、これは全てという事ではなく、
曲目の大半が“News Of The World”収録のマスターテープとの事です。
下記の曲目は、2003年初頭に公表された「紛失マスターテープ楽曲」の全てです。

 God Save The Queen 
 The Prophet's Song (acapella section only)
 Sheer Heart Attack
 All Dead All Dead
 Spread Your Wings
 Sleeping On The Sidewalk
 Who Needs You
 My Melancholy Blues
 Coming Soon
 Staying Power

注目すべき点は、“News Of The World”から6曲が含まれている点ですが、
これら6曲は、数本のリールに収録されていたにも関わらず、全てを紛失した、と考えるのが自然でしょう・・・。

現時点(2007年)で、少なくとも“Coming Soon”“God Save The Queen”は発見されているものの、他のトラックに関しては発見されたか、発見されていないのかは、分かりません・・・。

これらの曲のうち、“GVH1”“GVH2”に収録された曲は、(God Save The Queenを除いて)“Spread Your Wings”のみですが、
この曲のリミックスは、2トラックテープから擬似的に5.1サラウンド化してあります。
(この件に関してよく質問を受けるので、ここで書いてしまいますが・・・、フロントチャンネルはノーマルの2トラック音声をそのまま収録。リアチャンネルはセンターキャンセル(一般向けソフトなどではボーカルキャンセラーとも言いますが)の処理を施したセンター音声抜きの左右の音声のみを収録してあります。その為にリアチャンネル側はモノラル音声になっている訳です。決して「リア側はカラオケ音声を使った」という事ではありません)
“The Prophet's Song”の“acapella section”も同様に擬似的に5.1サラウンド化されています。
(この件に関しても質問を受けるので、書いてしまいますが、1/1000秒より少し長いディレイ等を掛けると、音声に広がりが出ますが、それを利用してフロントとリアの音声が立体的に聞こえる様にしている訳です)
これは、マスターテープが存在しない為の唯一の方法だったと思われます。
しかし、“GVH1”収録の“Spread Your Wings”を選択すると、ジョンの弾くアコースティックギターが、
聞こえてきます。この様に、あるパートの楽器のみの一部分だけを取り出す際、
オリジナルマスターテープが必要である事は、皆さんにもご理解頂ける事と思います。


1998年に、“QUEEN GREATEST KARAOKE HITS”が発売された際、“Spread Your Wings”も
含まれていますが、フレディのヴォーカル部分のみをオフにして、収録されているので、
この時点ではオリジナルテープは存在していたと考える方もいらっしゃると思いますが、
不思議な事に、“KARAOKE HITS”の“Spread Your Wings”に収録のジョンが弾くベースラインは、
レコード(またはCD)とは異なっていました。

これらの事から推測出来る事ですが、“Spread Your Wings”に関しては、オリジナル24トラックテープを
そのまま別の24トラックテープにコピーしていたのでは無いか?、という事です。
つまりマスターテープを保護する為の処置が取られた、という事です。
ただし恐らくですが、内容は異なる物だったと思われます。フレディのヴォーカルが仮歌段階の物・・・、
ジョンのベースが仮の段階のアレンジだった物・・・、エンディングが異なっていた物・・・(「コーダ部分のブライアンのギターソロが入っていない」など)、と推測する事が出来ます。

もし、テープに「正」と「副」と名付けるなら、現時点で存在する“Spread Your Wings”の24トラックテープは、
「副」のみであり、これらの要因によって、“GVH1”収録の“Spread Your Wings”では2トラックテープを使用し、
“GVH1”チャプター読み込みの際に聞こえるアコースティックギターと“KARAOKE HITS”では、
「副」テープを使用したのでは?、と推測する事が出来るのです。
(同様に、“My Melancholy Blues”にも「副」テープが存在していると思われます。
詳細はVIDEO“Champions Of The World”のエンディング、
DVD“Freddie Tribute”「Documentary」のエンディングをご覧下さい)

レコーディングでは、この様に、録音して消して、その上から別の音を録音する、・・・という作業の繰り返しが、頻繁に行われる為、この事を踏まえると、ジョンのベースが、最終的に差し替えられたのは、副のテープ作成後という事が考えられます。


現在でこそ、マスターテープを厳重に保管する事を義務付けられる様になったものの、
当時は、保管倉庫等の確保の為に、処分されてしまう事も多々有ったと、幾つかの本等で読んだ事があります。
クイーンのテープは厳重に保管されていた筈ですが、紛失しても不思議では無い状況に有ったと考える事ができます。