Finger Rest

フェンダーボディ(64年製)
(↑注:ジョンのベースではありません)
まずは、用語説明から・・・。
左の画像は、アメリカ・フェンダー社のプレシジョン・ベースのボディ部です。
黄色い矢印に注目してください。
この黒いプラスティック製のパーツを、「フィンガー・レスト(サム・レスト=THUMB REST)」と呼びます。
フィンガーレストとは、一般的に右手を固定する際に、指を置いて支えにする為の物です。原則的には、人差し指、中指、薬指を矢印の方向から押し当てて、親指で弦を弾く、という演奏法です。

このベースは1964年製のベースですが、フィンガーレストがこの位置に設置されているタイプのプレシジョンは、1954年から1975年の間に作られた物である事を表しています。
フェンダーボディ(77年製)
(↑注:ジョンのベースではありません)
一方、こちらのプレシジョンベースは、1977年製のベースですが、フィンガーレストの位置が黒い矢印の位置に変更になっています。演奏法としては、親指を矢印の方向から置く様に押さえて、人差し指、中指等で弦を弾く、という演奏法です。

このタイプは、1976年以降、1984年頃までに作られたプレシジョン・ベースの特徴という事になります。が、それ以降、現在までに作られたプレシジョン・ベースには、フィンガーレストが付いていません。ただ単に「必要無いから」という理由から付けられなくなったのですが・・・。

通常のジョン指弾きスタイル
ジョン・ディーコンは、フィンガーレストを使用しないタイプのベーシストだと言われています。
実際、左の画像の様に、ジョンは「ピックアップの上部」に親指を置いて演奏する奏法をとっているからです。
この場合は当然、フィンガーレストは必要ありません。
ジョンの親指弾きスタイル
もし仮に、ジョンが親指で弾く場合であっても、フィンガーレストは使用しません。この場合、1弦(G弦)に人差し指を引っ掛けて、親指で弦を弾く奏法を用います。
したがって、ジョンにとってフィンガーレストは必要無い事になるのですが・・・、

実際、そうであったのかと言うと、話は複雑になります。
メーカー不明PBベース(フィンガーレスト位置変更)
左の画像は、“St Johns Wood Studios”で収録された“Keep Yourself Alive”“Liar”のPVからの画像です。

画像の矢印を見て頂くと判りますが、フィンガーレストは、ピックアップの上部に取り付けられています。先程の77年製プレシジョン・ベースのフィンガーレストの位置の違いを見比べてください。

ジョンは本来、ピックアップの上に親指を乗せて弾くタイプでは無かった、という事が考えられます。
何故かと申しますと・・・(↓)
サンバースト1タイプ(初期ジョン指弾きスタイル)
左の画像は、“Brewer Street Studio”で収録された“Keep Yourself Alive”“Liar”のPVですが、この映像でのジョン(デビュー当時)は、ピックガードの外側の淵の部分に親指を置いて演奏する奏法をとっています。

ただ常にこうであったという事は言えませんが、少なくともこのビデオの中では、親指はこの位置から一切離していません。

つまり、ジョンは本来、ピックアップ上部に指を乗せて弾く奏法では無かった、という事が考えられるのです・・・。

これ以降、ジョンは、ピックアップ上部に親指を乗せて演奏する奏法に変わるのですが・・・。
ナチュラル1タイプ(フィンガーレスト位置変更)
例外も有ります。

左の画像は“Crazy Little Thing Called Love”のPVからの画像ですが、この“プレシジョン・ナチュラル1タイプ”のベースには、一時的でも、フィンガーレストの位置を、ピックアップの上部に取り付け直しています。
ジョンは実際、フィンガーレストをこの位置に設置した状態のまま、ツアーも行っていました。

が、ここで問題にしたいのは、ジョンはこのビデオの中で、「終始フィンガーレスト上部に指を当てて弾いていた訳では無い」という点です。
ピックガードの上部に親指を当てて弾いていたり、ピックアップ上部に指を当てて弾いていたりで、位置が定まっていません。

ナチュラル1タイプ(フィンガーレスト通常位置 w/ディマジオ)
左の画像は、“FLASH”のPVから。
使用しているベースは、ナチュラル1タイプですが、ボディは3番目のナチュラルボディと思われます。ピックアップは“ラリー・ディマジオ”考案の“ディマジオ社製”の物に交換されています。

ディマジオのピックアップは、オリジナルのフェンダー社製ピックアップよりも音が太く、ノイズも少なくなる、といった効果もありました。

フィンガーレストは、E弦上部から、G弦下部に付け直した痕跡が有りますが、これでは弾きづらかったのか、他のプレシジョン同様の位置に取り付けています(矢印の部分)。

その他に、“オールド・プレシジョンベース”でも、フィンガーレストの位置は、ピックアップの上部に取り付けて使用していますが、
このオールド・プレシジョンベースのピックアップは、プラスティック製のカバーが付いておらず、
ピックアップ内部が剥き出し状態になっており、「ピックアップ内のコイルに巻き付けたテープ」が露出している為、
直接ピックアップに指を置いて演奏した場合、断線等のトラブルを起こす危険性があります。
その為、フィンガーレストを取り付け直して使用していたと考えられます。
ちなみに、オールド・プレシジョンのフィンガーレストは、木製であり、
プラスティック製に変更されたのは、50年代後半からです。

この様に、“フィンガーレスト”だけに集中して観察するだけでも、色々と興味深い部分が出てくるものです。
実際、フィンガーレストに親指を置く奏法と、ピックアップに親指を置く奏法では、
演奏面で、かなりの違い(違和感)を感じるものです。