Fender Precision Bass Black

Fender Precision Bass Black
1986年6月から始まるクイーンのラストライヴツアーから、“ブラック・プレシジョン”としてスタートします。
“ナチュラル2”と“ブラック・プレシジョン”は、多くの共通点を持つという事になります。

筆者が、「ジョンの黒プレシジョンベースは、実はナチュラルプレベを黒く塗りなおしたのでは?」、
と推測し始めたのは、2002年9月〜11月頃だったと記憶しています。
1985〜1986年当時のフェンダー社のプレシジョンベースに、ブラックカラーは、
レギュラーカラーで存在していましたが、ネックは1968〜1970年代初期までのロゴ。
もちろん「ネックだけ取り替えたのでは?」とも考えましたが、まさかジョンはそんな事はしないだろう、
そう考えました。
その後「ベースのひと」管理人さんのmamiさんに、「ピーター・ヒンス氏にこの件を聞いていただけないか」
とお願いし、ピーター・ヒンス氏から「まさにその通り!ブラック・プレシジョンベースはナチュラルベースを磨いて、
黒く塗装したんだ」と返事を頂いた時は、mamiさんと共に喜んだ事を記憶しています。
ジョンがデビュー前から愛用していたプレシジョンベースは、
サンバースト→ナチュラル→ブラックと受け継がれた、全く同一のベースだった事が判明したのです。

一般的に、ミュージシャンは違う環境でのギグ等を嫌う性質があります。これは、安心感という部分も多分にあると思いますが、
何よりも、長い間使用し続けてきた楽器に対する信頼感は特に大事な点だと言えます。
ジョンは、このベースを愛用し続け、1997年のライヴ演奏、1998年の"No One But You"においても、このベースを使い通しました。
ジョンが20歳の頃から使用していたこのベースは、ジョンの「ミュージシャンとしての経歴の全て」であった事を表しています。

ヘッドのロゴを見ると、フェンダーのロゴは、ナチュラル2のタイプと同一の物です。
86年当時のフェンダーロゴは、シルバーで小さいタイプの物に変更されていました。
ボディ材が、60年代の質の高いアルダーを使用している点が、より重要になっていきます。


さて、何がどう変わったのかを御説明したいと思います・・・。

(ナチュラル→ブラックへの改良点=改造点)
1.ボディの凹み修復の他、ブリッジ横の小さなビス穴を埋める作業、及びボディを再研磨。
2.それに伴い、ボディカラーを、ナチュラルからブラックへ・・・(そうすれば、修復跡も残りません)
3.ネック部裏側を再研磨後、リフィニッシュ。
4.パーツ類の変更=パーツ類は全てゴールド・パーツを使用。
  (画像左:ブリッジをシャーラー製に。、ストラップピンをゴールドメッキのシャーラー製ロック式に。
  ヴォリューム、トーンコントロールのノブを交換(Precision Special から流用)、
  ピックガードを特注の物に交換(フェンダー製ではない、黒・白・黒の3プライ仕様)
(画像右:ストリング・ガイド、ペグを、Precision Special から流用。
  (ストリングガイドのみ、86年のツアー後、クロームメッキのノーマルタイプに戻している)
  (また、86年ツアー後、ストラップ側の“ストラップピンのパーツ”が、クロームタイプに変更されているが、ボディ側のパーツには変更は無いと思われる)
5.(これには変更があるかどうかは解りませんが)リフレット、ネックの調整、ピックアップの交換、ポットの交換、
  配線のやり直し、等・・・。

尚、この修復においての、回路的な改造は、全く無いと思われます。
ジョンというと、サンバースト、ナチュラル、ブラック、レッド、グレー、と、カラフルな色のプレシジョンを所有していたのですが、
実は、真の意味でのメインベースは常にこの1本・・・、サンバースト→ナチュラル→ブラックへと引き継がれた、このベースなのです・・・。
1998年の“No One But You”レコーディング・PV撮影を最後に、ジョンはこのベースを置き、音楽界から姿を消しました。。
ジョン・ディーコンにとっての、このプレシジョンベースは、クイーンの歴史と共に歩み続けた、真の名器だったのです。
ジョンが唯一愛し続け、絶対的な信頼を置いていたこのベースにこそ、真のクイーンサウンドが存在し得るのだ、
という事が言えると思います。



1997年 PARIS THEATRE NATIONAL DE CHAILLOTにて