第2巻

『キングコング対ゴジラ』音声について



:「シネテープ...、これは...同じロール7まで有るのでしょうか。」

清水さん:「そうですね、この(ネガの)本数と同じだけ有って、しかも、『モノラル版のシネテープ』が有って、『4チャンネル版のミックス・ヴァージョン』っていう物が有って、更に『4チャンネルの素材別』という...『セリフ』と『効果音』と『音楽』がバラバラに入っているっていう物も有るんですよ。
だから結構な本数が有りますね。」

TORIさん:「その『ミックス』は何故かこの時(1991年LD)には使えなくって...。『ミックスは無いよ』って言われて。でも『バラバラのは有るよ』と...。『セリフ・ステレオ』『効果音・ステレオ』『音楽・ステレオ』...、これは有るけどミックスされた物は無いよ、って言われたんで...その時はね。なのでこれ(1991年LD)はわざわざ新しくミックスをしたんですよ。その『監修をやって』って言われてやったんだけど...伊福部先生がゴジラ映画の音楽を録音するスタジオ(東宝サウンド・スタジオ......通常はダビング作業の際に使用されるスタジオ)で...、あの大きな画面で上映してやったんだけど、どうも音を小さく付けちゃったっぽいので...。気に入らない(笑)、捨ててください...(笑)。」

清水さん:「これ(1991年LD)は『ミックス素材』が無いので、バラから編集して作ったじゃないですか。そこで...音楽を絞り忘れたりとかしちゃったんで、これ(1991年LD)だけは音楽が流れ続けてる場所が3ヶ所くらい有るんですよね。」

TORIさん:「なので“偽物”なので早く闇に葬っていただきたい!(笑)」

清水さん:「いえいえ!それはそれで、今貴重なヴァージョンですから!(笑)」

:「そうです!貴重なヴァージョンですよ〜!(笑)」

清水さん:「なので僕は、坂元さんのホームページを観ると、『こっちはフェイドアウトしている、こっちはフェイドアウトしていない』っていう、ヴァージョンが有るじゃないですか。それを観て、『本当はどっちだったんだ?』っていうのを調べなくちゃいけなかったんですよ。それで4チャンネルのシネテープを探したら、『ミックス素材』が有ったんで、それではちゃんとフェイドアウトされてたんで、『じゃあモノラルと同じ様にフェイドアウトしているのが正解なんだ』、というのが分かったと。」

:「え〜!そうだったんですか〜!」

清水さん:「そうなんです。だから何でこれ(1991年LD)を作る時、『ミックス』が使えなかったのか、これが不思議なんですよ。 多分...絵に合わせて音を編集するじゃないですか。ミックスされてると全部その部分が飛んじゃうんで、それを『バラ素材』を使って編集して、間の抜けている部分を上手く調整しているんだと思われます。」

TORIさん:「で、これ(1991年LD)は、2チャンネルステレオでこの時は作った筈なのに、DVDでは4チャンネルなんで、ここ(1991年LD)からここ(2014年ブルーレイ)までの間に『音素材のミックス』が出てきたのだろうと。」

清水さん:「そういう事でしょうね...。」

TORIさん:「ただこの(1991年LD化の)時には、それ以前に『伊福部先生の全盛期の録音がステレオで在った!』っていうんで、そっちでみんな興奮して頭に血が昇っちゃった...。」

清水さん・私:「(笑)」

清水さん:「それをフルで聴かせようとしちゃったって事だ...(笑)」

TORIさん:「だから、これ(1991年LD)は、デジタル音声で掛けると音楽だけが流れるという恐ろしい仕様になっている...。」

清水さん・私:「なるほど...。」

TORIさん:「(レーザーディスクには)デジタル音声トラックとアナログ音声トラックが有って、映画の音はアナログトラックの方に入っている...」

清水さん・私:「(笑)」

TORIさん:「当時のレーザーディスクのプレーヤーって、デジタル対応の機種はデジタル音声再生がデフォルトになっていて、ちゃんといじらないと『映画の音』にならないという...。恐ろしい商品(1991年LD)なんだ...。」

清水さん・私:「(笑)」

TORIさん:「それぐらい、伊福部先生のステレオ録音で、頭に血が昇っちゃった...。」

:「私も最初、LDを掛けた時、『あれ?』って...(笑)」

清水さん:「頭は音楽だから普通に出てるけど、『あれ?セリフが出てこない』みたいな感じになりますよね...(笑)」

TORIさん:「みんなやってる、それ。(笑)。それくらい伊福部先生のステレオ録音が出てきたっていうのは衝撃だったんです...。そちらの衝撃がえらいデカかったんです...。」

:「それで、あのCD(完全収録 AKIRA IFUKUBE 映画音楽 東宝・大映篇 TYCY-5215,5216)も出されたのですね!」

TORIさん:「そうそう!こんなお宝音源をまずはこれ(1991年LD)で早く聴いてもらいたい、っていうんで、デジタルトラックに全部入った訳だけども、それをCDにしたいっていうんで、ユーメックスで...あの『東宝・大映版』ですね。それくらい伊福部先生のステレオ録音に、みんな頭に血が昇っちゃったというのはね、当時の文化として理解して頂きたい...(笑)」

:「それは本当に凄い事ですよね...皆さんが興奮された気持ち......物凄く分かります...。」

TORIさん:「興奮した...興奮した......だけど、冷静になってクールダウンして聴いてみると、センターチャンネルが無い...。」

清水さん:「(笑)...不思議ですよね...」

TORIさん:「そう、だから、(35mm、オリジナルのカット)ネガも出てきて、さらに相当頭に血が昇ってるから、冷静に作っていない...。」

清水さん・私:「(笑)」

TORIさん:「そこは甘くちょっと見ていただきたい...。」

一同:「(笑)」

TORIさん:「だって元々は、この盤(1991年LD:完全復刻版)って、これ(1986年LD:オリジナル復元版)の再プレスの予定だったんですから元々は...。これ(1986年LD)の廉価版再プレスの予定だったんですから。」

:「えー!そうだったんですか!」

TORIさん:「なのに...見つかったっていうんで...だからその後の作業は大慌てだったんですよ...。(1991年)11月1日発売って決まっていたから...。」

:「凄い...凄すぎます...」