キングコング対ゴジラ
オリジナル復元版
正規リリース盤
筆者は89年頃にレーザーディスクプレイヤーを購入し、このLDを入手した。ビデオテープの弱点は、テープを巻き込んでしまう等のトラブルが多く、またノイズが乗りやすい欠点があった。その点、レーザーディスクは非常に便利である。買い換えで重宝した。やはりレーザーディスク・・・、、"VHS"や"β"とは画質が断然違う。
この当時はまだLDと言えど値段は高く、心底好きでなければ買わない、と言った方が良い。東宝のソフトはどれも比較的、設定価格が他社のディスクより高めなのである。それでも好きな物は買わずにいられない。

話が逸れたが、"未編集プレス盤"との見極め方はディスクの内側に打たれた刻印(アナログレコードで言うところのマトリックスナンバー)、「TLL2064-A01」が"未編集プレス盤"、「TLL2064-A02」以降が"正規リリース盤"となる。一時期はジャケット裏面に赤いシールを貼り区別していたが、「回収盤」が店頭から消えてからは、この"正規リリース盤"もシールは貼られなくなる。見極めはディスク内側の刻印で。

"未編集プレス盤"とは異なり、色補正なども行われている。困難を極めた復元への尽力、東宝ビデオ事業部の技術には感嘆するものがある・・・。
以下に、"正規リリース盤"の特徴を記す。

1.オープニング「東宝マーク」の映像は綺麗な画質の物に差し替えている。
この「キングコング対ゴジラ オリジナル復元版」は、16mm全長版フィルムと35mmニュープリント版フィルムを使用して「オリジナル復元版」を作成したもので、本来であれば「東宝マーク」は、"退色化した全長版16mm"のみに存在するのだが、この"正規リリース盤"では綺麗な映像の「東宝マーク」が使用されている。となると、この部分・・・他映画から移植された物と考えた方が理屈としては正しい。
映像の傷の具合など比較してみた結果、"1961モスラ(1991年2月1日VHS発売)(1995年8月1日LD発売)"の「東宝マーク」から流用された物と分かった。もしかしたら、「キングコング対ゴジラ 予告編」と一緒にテレシネされたものなのかも知れない・・・。


2.新たにリミックスされたモノラル音源が使用された。
東宝は2001年DVD化の際、「現在、残存している音源は"4chシネスコ版"のみ」、という説明を記している。事実、「キングコング対ゴジラ・紙箱ビデオ版」とはミックスが異なる部分が数ヶ所あり、このLD盤の為に新たにリミックスされたとしか思えないのである。2019年現在、「1962年当時のモノラル音源」を使用して商品化された映像商品は、2014年発売「BD盤」のみである。


3.テレシネ
桜井役の高島忠夫さんが、ふみ子のボーイフレンド、藤田の部屋に入り、「おい!ふみ子!ふみ子」と叫び、ふみ子役の浜美枝さんの「あら、兄さん!」の直後、映像のコマ飛びがあるが、これは"紙箱ビデオ版""未編集プレス盤"でも同様であり、両方のヴァージョンが、全く同じテレシネテープから取られている事を意味している。その後にリリースされたソフトでは、この部分でのこの様なコマ飛びは見当たらない。
このLD盤は紙箱ビデオ版と比べても、色彩やコントラスト等に優れている。また「退色している16mm版」と「オリジナル短縮版35mm版」の映像差をなるべく違和感無く観られる様に調整されている様にも感じる。


4."ロールナンバー5"の冒頭「国連では〜」の部分のみ別フィルムからの流用がある。
田崎潤さん扮する"総監"のセリフ、
「国連では、“このままゴジラを放置しておく事は世界の破滅になる。よって、世界の平和の為、水爆攻撃の計画を考慮して欲しい”、という声が起こっているそうだ」の部分。
先の"未編集プレス盤"では、
「・・・ゴジラを放置しておく事は世界の破滅になる。よって、世界の平和の為、水爆攻撃の計画を考慮して欲しい”、という声が起こっているそうだ」
となり意味不明になる。これは、"フィルムナンバー5"の冒頭部分に当たるフィルムが欠けていたからである。古いフィルムには多々有る事だ(90年代に発売された「日本誕生」のLDなどもその様な箇所が多数ある)。
この"正規リリース盤"では、「国連では、このままゴジラを放置しておく事は世界の破滅になる」の部分のみ予告編のフィルムをテレシネして使用している。予告編を製作するのは主に本編班チーフ助監督の役目なのだそうで、梶田興治さん(多分・・・)製作の予告編にこのシーンが無かったら、このまま意味不明のままだったのかも知れない。ちなみに"予告編"は通常NGシーンを使用される事が多いが、これは「フィルムの二度焼き」に掛かる手間と費用を省く為と言われている。この「国連では〜」のシーンも勿論NGカットだ。