キングコング対ゴジラ
ニュープリント版
(東宝チャンピオンまつり版)
1992年8月1日に発売された"東宝チャンピオンまつり−ニュープリント版"を集めたLDボックス「ゴジラ激闘外伝」に収録。8枚組のこのボックスはいわゆる「私達世代の60年代ゴジラ集」とも言える豪華なボックスであり、所有するなら、このボックスは非常にお薦め。「時間が無いけどゴジラが観たい」という時に重宝する。

余談になるが、筆者は、1990年頃当時主流になっていた"フライングイレース機能"搭載のVHS機を使い、"オリジナル復元版"の画質の綺麗な部分を編集で繋ぎ合わせ、勝手な「短縮版」を作った事があるのだが、綺麗にまとまる部分と、どう観ても不可解な部分に分かれてしまう。そのまま意味不明なままだったのだが、このニュープリント版を観て愕然とした思い出がある。非常に巧みな編集だ。

LDやVHSなどのソフトの全てがDVD化やブルーレイ化されていない現状を考えると、過去のLDやVHSは貴重な存在だ。現在主流でない形態だからこその有難みがある。
当時、このBOXにしか収録されていなかった「短縮版」も、2014年のブルーレイ発売まで待たなければならなかった。
以下に"ニュープリント版"ついて述べる。

1.1970年公開ヴァージョン。
LDのエンディング部に「1970 TOHO,.Co LTD」の文字が入る。2014年発売のブルーレイにも収録された。印象としては“モスラ対ゴジラ 1980年版ニュープリント”に近い雰囲気の編集がなされているが、“1970年東宝チャンピオンまつり”公開版である。


2.オリジナルフィルムに直接ハサミを入れ、編集された。
現代のライブラリという視点で考えれば、唯一のオリジナルネガにハサミを入れる、という事はとても考えられない。1970年代という世相を考えれば、「エンターテイメント」という観点から見て、明らかにテレビが優勢であり、映画館から客足が遠のいていった時代だった。ましてや現在の様に家庭で映画を楽しむという時代が訪れるという事を、当時誰も想像し得なかった筈だからである。
「出来る限り、綺麗な画質で映画を楽しんでもらいたい」という制作者の方々の思いは、「オリジナルのネガをカットする」以外に方法は無かった。
現代風に考えれば、短縮版を作る際は、オリジナルフィルムを新たに別のフィルムに焼き、それをカット編集した後、サウンドのダビング処理を行い、それぞれのロールにカットし、完成させる筈だ。
「短縮版が作られ、オリジナル全長版は失われた」という説明は、「短縮版とは別に存在したオリジナル全長版を、いつの間にか紛失してしまった」、という解釈にしか思えなかったのだが、実際はそうでは無かった。


3.サウンドトラック
当時の「短縮版・音ネガ」を使用している。音質は、オープニング等、若干歪む部分があるが、おそらくオリジナルの「短縮版・音ネガ」に起因しているものと思われる。
「本編」を左chに収録、「音楽のみ」を右側chに収録してあるが、「音楽のみ」のトラックは「オリジナル復元版」作成の際に使用した音楽マスターから収録していると思われ、オープニング曲は「皆さん、地球は〜・・・」のセリフと同時にフェイドアウトする。残念ながら全ての「音楽トラック」が使われていない為、この盤には収録されていない「音楽トラック」もある。

SIDE Bのチャプター10、8955フレーム前後辺り(「キンゴジBD・短縮版」の1:03.59辺りの部分)の、"権藤幸彦隊員"の「ロープを切れ!」の部分。音楽のフェイドアウトが「全長版」と「短縮版」のタイミングが異なっており、全長版では「ロープを切れ!」の後も音楽は続くが、短縮版では「ロープを切れ!」のセリフと同時にフェイドアウトしている。後に発売された「2014年BD盤」、2019年に放送された「日本映画専門チャンネル版」も同様になっている。全長版と短縮版「それぞれの音声ヴァージョン」の違いだと思われ、短縮版のこの部分には明らかな意図的なフェイドアウトを感じる。短縮版製作の際に行われた作業だと思われる。


4.DVD化は不可能?
70年と77年に上映されたニュープリント版、本編冒頭と後半は非常に丁寧な編集を行い、サウンドトラックも新たに作り直されているが、本編中間部分は、オリジナルフィルムを切ったそのままである。このソフトのDVD化を望む声は非常に大きいが、東宝側にその意志は無い様に思える。「このままでは売り物にはならないと判断するのではないか」、と考えるのが普通なのかも知れない。

(2016年筆者記:2014年発売のBlu-rayに収録されました・・・)